初心者向け資産形成

教育費のリアル 〜 子ども一人にいくらかかる? 最新データと賢い備え方の完全ガイド 〜

 

目次

はじめに ── 「なんとなく不安」をなくすために

「子どもの教育費、本当にいくらかかるんだろう?」

子どもが生まれた瞬間から、この疑問はじわじわと頭の片隅に居座り続けます。毎月の生活費に追われながら、「貯金が足りないかもしれない」「何から始めればいいのか」と漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

実は、この「なんとなく不安」の正体は、数字を知らないことにあります。具体的な金額を把握し、時期ごとのお金の流れを理解することで、不安は一気に「課題」へと変わります。課題であれば、対処法があります。

本記事では、2024〜2025年に公表された最新のデータをもとに、幼稚園から大学卒業まで一人の子どもに実際にいくらかかるのかを徹底解説します。さらに、その費用をどう準備すればよいかの具体策まで、親御さんが今日から使えるカタチでお伝えします。

「知っていれば怖くなかった」 ── 読み終えた後、そう感じていただければ嬉しいです。

 

第1章 教育費の全体像を把握しよう

1-1 「教育費」は授業料だけじゃない

まず、教育費の定義を正確に理解しておきましょう。文部科学省の「子供の学習費調査」では、教育費を次の3つに分類しています。

区分 内容の例
学校教育費 授業料・入学金・修学旅行費・制服代・PTA会費など、学校に直接かかる費用
学校給食費 給食の材料費・調理費(主に小学校・中学校)
学校外活動費 学習塾・習い事・通信教育・家庭教師など、学校外でかかる費用

この3つを合計したものが「学習費総額」です。多くの家庭が見落としがちなのが学校外活動費。塾や習い事にかかるお金は、学校の授業料に匹敵するほど大きな出費になることも少なくありません。本記事では、この3つをすべて合計した「リアルな教育費」を中心に解説していきます。

 

1-2 幼稚園〜高校までの学習費総額(令和5年度 最新データ)

文部科学省が2024年12月に公表した「令和5年度 子供の学習費調査」によれば、1年間の学習費総額は次のとおりです。この調査は全国5万3千人以上を対象とした最新・最大規模のデータです。

学校種別 公立(年額) 私立(年額) 私立は公立の何倍?
幼稚園 約18万5千円 約34万7千円 約1.9倍
小学校 約33万6千円 約182万8千円 約5.4倍
中学校 約54万2千円 約156万円 約2.9倍
高等学校(全日制) 約59万8千円 約103万円 約1.7倍

公立と私立の差が最も大きいのが小学校です。私立小学校の年間費用は公立の約5.4倍。6年間で累計すると約1,097万円にのぼり、公立の約202万円と比べると900万円近くの差が生まれます。これは決して「授業料の差」だけではなく、放課後の習い事や学習塾にも積極的に投資している私立保護者の意識の違いも反映されています。

また、高校に関しては私立の無償化(就学支援金)の恩恵も出始めており、以前ほどの格差は縮まりつつあります。それでも私立は公立の1.7倍という数字は、家計への影響として無視できません。

 

1-3 幼稚園〜高校15年間の学習費総額

各学校種の年額を合計した、幼稚園から高校卒業までの15年間の学習費総額は以下のとおりです。

進学パターン 15年間の学習費総額
すべて公立 約596万円
幼稚園のみ私立・その他公立 約647万円
幼稚園+高校が私立・その他公立 約776万円
すべて私立 約1,976万円

すべて公立なら約596万円、すべて私立なら約1,976万円。その差は実に約1,380万円です。進路の選択が、いかに家計に大きな影響を与えるかがよくわかります。ただし、「全部公立コースだから大丈夫」と安心するのはまだ早いです。大学の費用がまるごと含まれていないことに注意が必要です。次章では、いよいよ「大学費用のリアル」を見ていきましょう。

 

第2章 大学費用のリアル ── 最大の「教育費の山」

2-1 入学金と授業料の基本

大学進学は教育費最大の山場です。国公立か私立か、文系か理系か、そして自宅通学か一人暮らしかによって、費用は大きく異なります。日本政策金融公庫の調査をもとに整理すると次のようになります。

進学先 4年間の総費用(自宅通学の目安)
国公立大学 約499万円(入学費用 約71万円+在学費用 約428万円)
私立大学・文系 約717万円(入学費用 約82万円+在学費用 約635万円)
私立大学・理系 約822万円(入学費用 約89万円+在学費用 約733万円)

国公立と私立理系では、4年間で約320万円以上の差があります。さらに一人暮らしをする場合、仕送りや生活費として4年間で400万円以上が追加で必要になります。

 

2-2 一人暮らし×私立理系は最大の試練

もっとも費用がかさむケースは「私立理系×一人暮らし」の組み合わせです。授業料・施設費などの学校納付金だけで4年間約822万円、これに自宅外通学費(敷金・礼金・仕送りなど)が加わると、1,200万円に迫る計算になります。

「子どもが関東の私立理系に入ったら、想像より大変だった」という親御さんの声は珍しくありません。地方から都市部の大学に進学する場合は、学費だけでなく生活費も含めたトータルコストで事前にシミュレーションしておくことが重要です。

医学部・歯学部は別格の費用に注意
私立の医学部・歯学部は6年制のため、4年制学部とは比較になりません。

学費だけで6年間に3,000万〜5,000万円超になる大学も多数あります。

子どもが医療系を志望している場合は、早い段階からの準備が不可欠です。

国公立の医学部であれば比較的負担は軽く(6年間で約350万円程度)なりますが、

合格するための受験対策費用(浪人含む)も加算して考えましょう。

 

2-3 幼稚園から大学まで、合計でいくらかかる?

大学費用を含めた、子ども一人にかかる教育費の総額を整理すると次のようになります。これを見ることで、どのルートを選ぶかによって家計への影響がどれほど異なるかが一目でわかります。

進学パターン 高校まで 大学4年間 合 計
全公立+国公立大 約596万円 約499万円 約1,095万円
全公立+私立大文系 約596万円 約717万円 約1,313万円
全公立+私立大理系 約596万円 約822万円 約1,418万円
全私立+私立大文系(自宅) 約1,976万円 約717万円 約2,693万円
全私立+私立大理系(自宅外) 約1,976万円 約1,200万円以上 約3,200万円以上

公立コースで大学は国公立という「最安パターン」でも約1,095万円。私立フルコースでは3,000万円を超えることもあります。この金額は、数年で準備できるものではなく、子どもが生まれた瞬間から計画的に積み立てていくことが求められます。

「ウチは公立で十分」と思っていても、子ども本人が私立中高一貫校を希望したり、地方から都市部の大学に進学したりするケースは十分ありえます。あくまで「平均」の数字として参考にしつつ、進路の幅を持たせた準備をすることが大切です。

 

第3章 見落としがちな「隠れ教育費」

3-1 塾・習い事にかかるリアルなお金

教育費の中で「見えにくい部分」が、塾や習い事などの学校外活動費です。先ほどの学習費総額にも含まれていますが、その内訳を見ると驚く方も多いはずです。

公立中学校を例に取ると、1年間の学習費総額54万2千円のうち、学校外活動費が約39万1千円を占めます。つまり学習費の72%は学校外への出費です。「公立だから安い」という認識は、半分正解で半分誤解といえます。

学校種 補助学習費(塾等・年額) 習い事等(年額)
公立小学校 約8万3千円 約13万3千円
私立小学校 約22万3千円 約55万3千円
公立中学校 約24万4千円 約14万7千円
私立中学校 約22万円 約19万3千円
公立高校(全日制) 約15万8千円 約6万7千円
私立高校(全日制) 約16万5千円 約9万8千円

特に注目すべきは「公立中学校の補助学習費(塾代等)」の高さです。私立中学校とほぼ同水準の塾代がかかっています。これは、公立中学から高校受験を見据えた通塾が一般的であることを示しています。「公立に行かせれば費用を抑えられる」という単純な話ではないのです。

 

3-2 中学受験にかかるお金

近年、都市部を中心に中学受験熱が高まっています。私立中高一貫校を目指す場合、受験に向けた準備にも相当の費用がかかります。

中学受験の費用内訳(おおよその目安)
【小4〜小6の3年間・学習塾費用】 年間60万〜120万円 × 3年 = 180万〜360万円

【模擬試験・受験費用】 複数校受験すると50万〜70万円程度

【参考書・問題集・消耗品】 3年間で20万〜30万円程度

【合計の目安】 250万〜460万円以上

 

難関校を目指す場合や複数の塾を掛け持ちする場合は、さらに上回ることもあります。

「中学受験をする」という選択は、それだけで数百万円規模の追加支出を意味します。

 

3-3 入学時の「一時金」に注意せよ

教育費には毎月・毎年かかる継続費用の他に、「入学時の一時金」という山があります。授業料は月額や年額でイメージしやすいですが、入学金・制服代・教材費・ランドセル代などが一度に重なる時期は、家計への打撃が大きくなります。

入学時期 主な一時出費の目安
小学校入学時 ランドセル(5〜10万円)+学用品・体操着・鍵盤ハーモニカなど(3〜5万円)
中学校入学時 制服(4〜7万円)+教科書・副教材・部活道具など(3〜10万円)
高校入学時 制服(5〜10万円)+教科書・副教材(3〜5万円)+入学金(公立2〜3万円)
大学入学時 入学金(国公立約28万円、私立文系約28万円)+前期授業料+教材・パソコン等

特に大学入学時は「入学金+前期授業料」を一括で準備しなければならないことが多く、数十万〜百万円単位のまとまったお金が一度に必要になります。この時期に向けた貯蓄は、早めに意識しておくことが重要です。

入学月(3〜4月)が集中するため、祖父母からの支援や贈与を上手に活用するご家庭も少なくありません。ただし、年間110万円を超える贈与は税務上の注意が必要ですので、詳細は税理士や金融機関へ確認しましょう。

 

第4章 教育費の「助け舟」── 児童手当を最大限活用する

4-1 2024年10月から大幅拡充された新制度

2024年10月から児童手当が大幅に拡充されました。政府が掲げる「異次元の少子化対策」の一環として、これまでより多くのご家庭が、より長い期間、より多くの手当を受け取れるようになっています。主な変更点は5つです。

  1. 支給対象の延長:中学生以下 → 高校生年代(18歳の誕生日後の最初の3月31日)まで延長
  2. 所得制限の撤廃:年収に関係なく全世帯が満額受給可能に。これまで対象外だった高所得世帯も受給できます
  3. 多子加算の増額:第3子以降が月1万5千円 → 月3万円に倍増
  4. 多子カウントの見直し:上の子が22歳年度末まで第1子としてカウント可能になり、3人きょうだいの場合により長く月3万円を受給できます
  5. 支給回数の増加:年3回(4ヶ月分ずつ) → 年6回(2ヶ月分ずつ)に変更。活用計画が立てやすくなりました

 

4-2 結局いくらもらえる?支給総額シミュレーション

「第1子・第2子」と「第3子以降」では、受取総額に大きな差があります。子どもが生まれてから高校を卒業するまで(約18年間)に受け取れる総額の目安は次のとおりです。

子どもの順番 0歳〜高校生年代(約18年間)の支給総額
第1子・第2子 約234万〜245万円
第3子以降(最大の場合) 約648万〜681万円

第1子・第2子でも約240万円近くが国から支給されます。この約240万円を、生まれた時から大学進学前まで手をつけずに積み立て、さらに運用すれば、教育費準備の大きな原資になります。第3子以降は最大で約680万円を超える受給も可能になりました。多子世帯のご家庭はこの制度改正を最大限に活用しましょう。

 

4-3 児童手当の「全額運用」が最強の準備術

多くのFP(ファイナンシャルプランナー)が口を揃えるアドバイスがあります。「児童手当は全額、手をつけずに貯めなさい」というものです。

毎月1万円の児童手当を18年間、まったく使わずに積み立てると、単純計算で約216万円。これに3歳未満の月1.5万円の部分を加えると、さらに増えます。これを新NISA(詳しくは第6章)で年3%で運用したと仮定すると、18年後には約270万円以上になる計算です。

「生活が苦しくてなかなか貯められない」という方でも、「児童手当だけは別口座で管理して手をつけない」というルールを設けることで、着実に教育資金を積み上げることができます。手当は自動的に振り込まれるので、「最初からそこにないもの」として扱うのがコツです。

「児童手当専用口座」を今すぐ作ろう
実践方法として最もシンプルで効果的なのが、受取専用口座を別途開設することです。

 

Step1: 児童手当専用の口座を開設(生活費口座と分ける)

Step2: 児童手当の受取口座をその専用口座に設定

Step3: 手当が振り込まれたら、そのまま手をつけない

Step4: 余裕があればその口座から新NISAの積み立てに充てる

 

「見えないところにある」だけで使わずに済む、というのが行動経済学的にも正しい方法です。

月数千円からでも、今すぐ始めることが18年後の大きな差を生みます。

 

第5章 教育費にまつわる家計の落とし穴

5-1 「収入の15%が教育費」という現実

日本政策金融公庫の調査によると、高校入学から大学卒業まで子ども一人にかかる教育費用(高校・大学段階の入学・在学費用)は平均で約942万円。これを世帯年収に対する比率で見ると、年収400〜600万円台の世帯では収入の約15%近くを教育費に充てている計算になります。

つまり手取り収入の6〜7分の1が教育費に消える──これが多くの中間層家庭の現実です。住宅ローン、生活費、老後の準備と並行してこの比率を維持するのは、何の計画もなければ非常に困難です。「教育費は気合で乗り越える」という考え方は、将来の老後破産につながるリスクをはらんでいます。

 

5-2 「老後 vs 教育費」の葛藤をどう解決するか

よく相談される悩みのひとつが、「子どもの教育費を優先したら老後資金の準備が遅れた」というケースです。

大学の費用が重なる40代後半〜50代前半は、親御さん自身の老後資金を積み上げるべき最重要期間でもあります。奨学金を借りれば子どもの月々の負担になり、親が出しすぎれば老後が苦しくなる。この「板挟み」は多くの親が直面します。

専門家の意見では、「老後資金と教育費の準備は並行して行うべき」とされています。どちらか一方だけに集中すると、後からもう一方が崩壊するリスクが高いためです。子どもが10代になる前(老後まで20年以上ある時期)から、iDeCoや新NISAで老後資金の積み立ても並行して始めることをお勧めします。

 

5-3 「教育ローン」と「奨学金」の使い分け

それでも費用が足りない場合、主な選択肢は「教育ローン」と「奨学金」です。両者の違いを正しく理解しておきましょう。

比較項目 国の教育ローン(日本政策金融公庫) 日本学生支援機構 奨学金
借りる人 保護者 学生本人
限度額 子1人あたり350万円(特定条件で450万円) 第一種:無利子 / 第二種:有利子
利率 固定2.25%程度(2025年時点) 第二種:上限3%(変動型あり)
返済開始 貸付後すぐ〜卒業後6ヶ月以内 卒業後6ヶ月後
審査 世帯年収制限あり 学力・世帯収入で選考
注意点 保護者の信用審査が必要 子どもが社会人になってから20年程度の返済負担

奨学金は「子どもへの借金」です。社会に出てから月々2〜3万円の返済が15〜20年続くことを、子ども自身が理解した上で利用する必要があります。「親が奨学金を申請して子どもに知らせていなかった」というケースでのトラブルも起きています。家族で事前にしっかり話し合いましょう。

一方、国の教育ローンは保護者が借りるため、子どもの返済負担はありません。ただし世帯年収に上限があり、対象外になるご家庭も。詳細は日本政策金融公庫のサイトで確認してください。

 

5-4 大学の無償化制度を見落とすな

国による高等教育無償化制度(授業料等減免・給付型奨学金)も見落とせません。2025年度からは多子世帯(子ども3人以上)への支援がさらに拡大し、所得制限なく一定額まで大学等の授業料・入学金が無償化されました。これは3人お子さんがいるご家庭にとって非常に大きな恩恵です。

対象要件は年々拡充されているため、「以前は対象外だった」という方も改めて確認することをお勧めします。

確認すべき公的支援まとめ
① 高等教育無償化(授業料等減免+給付型奨学金):主に年収380万円未満〜600万円目安

② 多子世帯への拡充(2025年〜):3人以上の子どもがいる世帯は所得制限なし

③ 私立高校等就学支援金:年収目安590万円未満の世帯で私立高校の授業料が実質無償化

④ 各自治体の独自支援:東京都「018サポート(月5,000円)」などの地域独自給付

 

制度は頻繁に改正されます。入学前年度に最新情報を文部科学省・各自治体で確認しましょう。

「申請しなければもらえない」ものばかりです。忘れずに手続きを行いましょう。

 

第6章 教育費の賢い貯め方・運用法

ここからが本記事の核心です。教育費の「リアルな金額」がわかったところで、次は「どうやって準備するか」を徹底解説します。大切なのは、「貯める」「守る」「増やす」という3つのアプローチをバランスよく組み合わせることです。

 

6-1 3つのアプローチを組み合わせる

教育費の準備には大きく3つのアプローチがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、組み合わせが鍵になります。

アプローチ 代表的な手段 リターン リスク 向いている人
預貯金 積立定期預金・財形貯蓄 低(0.1%前後) ほぼなし 確実に守りたい・まず土台を作りたい
保険 学資保険・低解約返戻金型終身保険 低〜中(1〜2%程度) 途中解約で元本割れ 強制的に貯める仕組みが必要な人
投資(NISA) インデックス投資信託 中〜高(期待値3〜7%) 元本割れあり(長期で減少) 時間的余裕が10年以上ある人

どれかひとつで「完璧な準備」はありません。「守る資金(預貯金・保険)」と「増やす資金(新NISA)」を組み合わせることで、安心感と期待リターンのバランスが取れます。目安として、「大学進学まで10年以上ある期間はNISAで運用し、5年前からは徐々に安全資産に移していく」という戦略が有効です。

 

6-2 新NISAを使った教育費準備の具体的方法

2024年からスタートした新NISAは、教育費の準備に非常に相性の良い制度です。非課税で運用できる期間が無期限となり、年間360万円まで投資可能、生涯投資枠は1,800万円に拡大されました。

ただし注意が必要です。新NISAは18歳未満は口座を開設できないため、「子ども名義で運用する」ことはできません。親名義のNISA口座で積み立てを行い、大学進学時に引き出して教育費に充てるというのが正しい活用法です。

 

▍ シミュレーション①:子どもが0歳から始めた場合

目標:大学進学時(18年後)に500万円を準備したい場合、年利3%で運用したとすると、必要な月額積立額は約1万7,500円/月となります。

児童手当(第1・2子)だけで月1万〜1.5万円受け取れますので、それをそのままNISAに充てるだけで、相当部分が賄える計算です。「特別に家計を絞らなくていい」というのが、早期開始の最大の魅力です。

 

▍ シミュレーション②:子どもが10歳から始めた場合

目標:大学進学時(8年後)に500万円を準備したい場合、年利3%で運用したとすると、必要な月額積立額は約4万8,500円/月となります。

始める時期が遅くなるほど、毎月の積立額が急増します。0歳から始めた場合の約1万7,500円と比べると、2.7倍以上の積立が必要になるのです。まさに「早く始めることの重要性」を数字が物語っています。

今この記事を読んでいる方へ。子どもが何歳であっても、「今日が一番若い日」です。始めるなら、今すぐがベストです。

 

新NISAで教育費を準備する際の3つの注意点
① 株式市場は短期では大きく変動します。「使う5年前からは守りに入る」という

リスク低減戦略(徐々に売却・現金化)が重要です。

 

② 教育費は「必ず使う時期が決まっているお金」です。老後資金と違い、

運用が振るわない時期に引き出しを迫られるリスクがあります。

全額をNISAで運用するのではなく、預貯金との併用を推奨します。

 

③ 口座は親名義のため、子どもへの資金移動に際しては

贈与税(年間110万円以上の場合)に留意してください。

 

6-3 学資保険は今でも選択肢になるか?

「学資保険は必要ですか?」というのも頻繁に寄せられる質問です。結論から言うと、「一定の役割はある、ただし万能ではない」です。

学資保険の最大のメリットは「強制的に貯められること」と「親(契約者)に万が一のことがあっても満期保険金が保証されること」です。投資に不慣れで、NISAを始める自信がない方、あるいは共働きで一方に万が一があった際のリスクを減らしたい方には、安心感があります。

一方デメリットとして、現在の学資保険の利率は非常に低水準(返戻率103〜108%程度の商品が多い)です。インフレが続く中では、実質の購買力は下がることになります。また途中解約すると元本割れします。「硬直した商品設計」ゆえに、子どもの進路が変わった場合や緊急の出費には対応しにくい面もあります。

NISAと学資保険を比較する場合、基本的には「長期で見るとNISA優位、確実性・万一への備えでは学資保険優位」です。家庭の状況に応じて使い分け、または組み合わせることをお勧めします。たとえば「学資保険で100万円の確実な保障を確保しつつ、残りをNISAで運用する」というハイブリッド戦略は、多くのファイナンシャルプランナーが推奨するアプローチです。

 

6-4 今すぐできる「教育費準備の4ステップ」

理論はわかっても、「じゃあ明日から何をすればいいの?」という方のために、具体的なアクションを4ステップで示します。難しく考えず、一つずつ実行してください。

  1. Step1:目標額を決める。子どもが進みそうな進路をざっくり想定し、必要な教育費の目安を計算する(本記事の表を活用)。「全公立+国公立大」なら約1,100万円、「全公立+私立文系」なら約1,300万円が目安。
  2. Step2:現状把握。今いくら貯まっているか、毎月いくら捻出できるかを確認する。家計簿アプリを使うと、支出の全体像がつかみやすい。
  3. Step3:口座を分ける。教育費専用口座を開設。児童手当の受取先もここに変更する。「最初から別管理」にするだけで、残高が目に見えて積み上がっていく実感が得られます。
  4. Step4:仕組みを作る。新NISAの積立設定(月額・銘柄)を行い、自動化する。最初の設定をしてしまえば、あとは放置で積み上がる。インデックスファンド(全世界株式や全米株式など)から始めるのが初心者には最適。

「完璧な計画」を作ろうとすると動けなくなります。まず「Step2とStep3だけ今週やる」と決めるだけで、十分な第一歩になります。始めてしまえば、続けることは思いのほか簡単です。

 

第7章 ケース別シミュレーション ── あなたの家庭に近いのはどれ?

ここまで学んできた知識を元に、代表的な家庭のケース別で「いくら準備すべきか・月いくら積み立てれば間に合うか」をシミュレーションします。自分の家庭に近いケースを参考にしながら、具体的な数字でイメージを膨らませてください。

 

ケース① 子ども1人、全員公立コース(最も現実的な平均像)

進路想定:幼稚園〜高校すべて公立 + 大学は国公立(自宅通学)

概算教育費:高校まで約596万円 + 大学4年間約499万円 = 合計 約1,095万円

うち「一度に大きく必要な大学関連費用」は入学時100万円以上+4年間の在学費用約428万円。最初の1年だけで入学金・前期授業料を合わせると約100万円以上が必要です。

積立プラン目安:月3万円 × 18年間(0歳から)= 648万円の積立元本。年3%で運用すると約870万円に。残り分は高校時代にペースを上げるか、在学中にアルバイト・奨学金を活用することで対応できます。

「全部公立でも1,000万円以上かかる」という現実を受け入れた上で、「では毎月いくら積み立てれば間に合うか」という逆算の思考が大切です。

 

ケース② 子ども2人、上の子は私立中高を検討

進路想定:子ども2人(第1子・第2子)。上の子は私立中高一貫校、下の子は公立。大学は2人とも私立文系(自宅通学)。

概算教育費の試算:上の子・私立中高(6年間)+私立大文系 = 約468万円+約390万円+約717万円 ≒ 約1,575万円。下の子・公立中高(6年間)+私立大文系 = 約163万円+約179万円+約717万円 ≒ 約1,059万円。2人合計 約2,634万円。

2人の教育費がかぶる期間(特に両者が大学・高校・中学にかかる時期)のキャッシュフローを特に入念にシミュレーションすることが重要です。2人分の学費が同時にかかる時期は、世帯の支出が急増します。また、上の子の中学受験準備(小4〜小6)の塾費用(目安250万〜460万円)も忘れずに計上しましょう。

 

ケース③ 子ども3人、コストを抑えたい多子世帯

進路想定:3人ともできるだけ公立コース、大学は国公立を目指す。

概算教育費:約1,095万円 × 3 = 約3,285万円(シンプルに3人分)。ただし第3子の児童手当は月3万円(最大で総額648〜681万円)。3人分の教育費から手当分を引けば:実質負担は2,600万円台まで圧縮できます。

さらに第1子・第2子の児童手当(各約240万円)、2人合計約480万円を活用し、多子世帯の大学無償化制度(2025年〜)も積極的に活用することで、実質負担はさらに軽減できます。

3人の子育ては大変ですが、制度面での支援は最も手厚いのが多子世帯です。制度を最大限活用するためにも、早めに「自分たちの家庭はどの制度が使えるか」を調べておきましょう。

 

大切なのは「幅を持たせた試算」をすること
子どもの進路は変わります。「全員国公立のつもりだったのに、

気がついたら3人とも私立大に…」というケースは珍しくありません。

 

準備する金額は「最安見積もり」ではなく「中間より少し上の見積もり」が安全です。

余った場合は老後資金に回せます。足りなかった場合は奨学金か教育ローンを使うことになります。

「少し多めに準備する」という戦略が、家族の選択肢を広げてくれます。

 

また、子どもの数が決まっていない段階でも「2人を想定した準備」から始めて

後から調整する、というアプローチが現実的です。

 

第8章 子どもとお金の話をしよう

8-1 「うちはいくら準備できているか」を子どもに伝えること

多くの親御さんが「お金のことは子どもに言わなくていい」と思っています。しかし近年の研究や教育専門家の声からは、「子どもと教育費についてオープンに話すことは、子どもの金融リテラシー・進路選択・親への感謝に好影響を与える」という指摘が増えています。

特に大学進学の費用については、「自分の進学に家族がどれだけ投資してくれているか」を子ども自身が知ることで、学びへの姿勢が変わるケースがあります。自分の教育にかかっているお金を知った子どもが、「もっと真剣に勉強しよう」と思ったという話は珍しくありません。

「うちは国公立なら全額出せる。私立の場合は一定額は奨学金を借りてほしい」というような現実的な話し合いは、高校生になる前には済ませておくことをお勧めします。子どもが進路を考える前に、「家庭の財布の大きさ」を共有しておくことが、後のトラブルや後悔を防ぎます。

 

8-2 奨学金は「親の問題」ではなく「家族の問題」

奨学金を利用する場合、それは子ども自身が社会に出てから返済する借金です。平均的な借入額は大学4年間で300〜400万円。月々の返済額は1万6千〜2万2千円、返済期間は15〜20年になることも珍しくありません。

就職後の収入と返済額を照らし合わせると、特に文系卒業生で初任給が低い職種では、生活を圧迫するほどの負担になる場合があります。「奨学金=借金」という認識を家族全員が共有した上で、計画的に利用することが重要です。

近年は「奨学金問題」として社会的に注目されており、返済できずに信用情報に傷がつくケースも報告されています。利用するなら金額は最小限に。返済計画を入学前から立てておくことが賢明です。

 

8-3 「投資思考」で教育費を捉えなおす

最後に、少し視点を変えてお伝えしたいことがあります。

教育費は「出ていくだけのお金」ではありません。子どもへの投資です。良質な教育・経験・ネットワーク・思考力は、子どもが生涯を通じて稼ぐ力・豊かに生きる力の土台になります。投資として考えれば、どの学校や経験に何を期待するかという「目的意識」が生まれます。

もちろん、多くお金をかければ良い教育を受けられる、ということではありません。公立でも素晴らしい教育環境は多くあります。問題は「どのくらいかけるか」よりも「何のためにかけるか」「子どもが何を求めているか」です。

お金の計画は、子育ての方針・家族の価値観と深く結びついています。本記事で示した数字は「地図」です。その地図を使って、どのルートを歩くかは、あなたと家族が決めることです。数字を知ったことで、迷わずに歩ける道が広がるはずです。

 

まとめ ── 「知っていれば怖くない」教育費

本記事で解説した内容を最後に整理します。教育費の「リアル」を正面から見ることで、漠然とした不安が具体的な行動計画へと変わります。

 

チェックポイント 内 容
幼稚園〜高校の費用 公立のみ約596万円〜全私立約1,976万円(令和5年度データ)
大学の費用 国公立499万円・私立文系717万円・私立理系822万円(自宅通学)
塾・習い事も忘れずに 公立中学でも年間39万円以上が学校外に消えていく現実
入学時の一時金に備える ランドセル・制服・入学金など、入学月前後の一時出費を見越して準備
児童手当は全額貯める 第1・2子で約240万円。専用口座でNISA積立が最強の活用法
新NISAで「増やす」 10年以上の時間的余裕がある段階でのインデックス積立が有効
「守る」と「増やす」を両立 預貯金・学資保険で守り、NISAで増やすハイブリッド戦略
公的制度を活用する 高等教育無償化・多子世帯支援・各自治体給付を最大限利用
子どもと話し合う 高校生前には教育費の現実をオープンに共有しておく

 

教育費への漠然とした不安の正体は、「数字を知らないこと」でした。本記事を通じて、その不安がいくらかでも「取り組める課題」に変わったなら、この記事の目的は果たせています。

大切な子どもの未来のために、今日から一歩踏み出してください。まず専用口座を一つ作るだけでいい。新NISAで月3,000円だけ始めるだけでいい。児童手当の受取口座を変えるだけでいい。小さな一歩が、数年後に大きな差になります。

子育ては長い旅です。お金の準備が整っていれば、その旅はずっと楽しくなります。